現代では、あらゆる企業や個人がソーシャルメディアを積極的に利用しています。このような状況下で、ソーシャルリスクはますます複雑になっています。企業担当者は、SNS上での炎上によるイメージの悪化、風評被害、情報漏えいなどのリスクにどのように対処すべきかについて悩んでいるかもしれません。
この記事では、新しい時代におけるソーシャルリスクマネジメントについて解説いたします。
目次
ソーシャル・リスクとは
ソーシャル・リスクとは、一言でいうと企業にとってダメージになる、マイナスの印象を与える危険性をはらんだ要因です。
現在では特に、Twitterをはじめとするソーシャルメディア(SNS)を出発点として発生するリスクをいいます。
では一体、どんなソーシャル・リスクが潜んでいるのでしょうか。
次に列挙してみました。
1.従業員およびパートタイマーなどの内部スタッフの情報漏洩
2.商品やサービスを利用する顧客からのクレーム
3.一般広告やテレビコマーシャルに対する非難批判
4.従業員や顧客のイタズラ的行為による商品のブランド・イメージの低下
5.ブログ等のSNSを利用した書込み、口コミによる非難、風評
などなど、内容も種類もさまざまです。
そしてこれらのソーシャル・リスクはSNSの登場とともに年々増加傾向にあります。
ソーシャル・リスクによる影響
では、ソーシャル・リスクが顕在化した場合を考えてみましょう。
企業自体に明らかに非があり、炎上した場合、ざっと以下のようなケースが想定できます。
そのマグニチュード(重大さ)によって分類しますと――
1.許認可事業であれば、監督する公的機関の厳重注意を受ける
2.1週間の営業もしくは生産中止を余儀なくされる
3.記者会見を余儀なくされ、新聞やテレビなどのメディアで大々的に報道される
4.商品の不買運動が起きる
5.社長が引責辞任に追い込まれる
6.営業免許を停止される
7.人材の大量流出が起きる
8.会社倒産に追い込まれる
とまあ一見、大げさに映るかもしれませんが、対応を間違えると最悪の事態を招きます。
インターネット時代の現代社会においては、リスクはどこにでも転がっています。きっかけはひょんなことでも重大事に発展してしまいます。
ついつい油断していると、悪意を持った人間にいつ狙い撃ちされるやもしれません。
それでは、つぎの章ではその発生する背景と、リスクの種類について触れていきたいと思います。
ソーシャル・リスクの背景と種類
会社のリスクといっても、ひと昔前(昭和の頃)ですと単なる悪口や陰口程度でとどまっていた気がします。たとえそれが、会社の業績に関することだとしても、社員同士のオフィスラブだとしても、公然の事実として飲み会などの折のおおらかな話のネタになるくらいでした。
ところが今は、どうでしょう?
インターネットやスマートフォンの普及で、誰かが真偽も確かめずツイートでもしようなら、翌日にはあっという間に会社中を駆け巡り、誰もが飛びつくトピックになり替わる可能性だってあります。
つまり、いつでも、どこでも、誰でも発信できる時代に私たちはいる、ということです。
そして関係者だけでなく、大げさに言えば、世界中のすべての人がその話題に聞き耳を立てているということです。そして、人から人へ、LINEからLINEへ。
SNSによるその拡散スピードは、新幹線のぞみを超える超速です。
人の口に戸は立てられない、という古いことわざがありますが、まして人がこっそり書くことを止めるのは不可能です。
では、リスクにはどんな種類があるでしょうか。
俗に言う井戸端会議的なトークには、ほんのうわさ程度のこともあれば、まるっきりのガセネタだって含まれています。
たまに砂漠で一粒のダイヤモンドを探し当てる確率で、有名タレントどうしのデート現場を目撃した、という事実が含まれているかもしれません。
あるいは、ある企業が不渡りを出した、という情報やリコールのうわさもあるかもしれません。
現代社会はストレスに満ちています。
何かに不満を持つ誰かが本来、明かしてはいけないとわかっていてもストレスのせいで、会社のトップシークレットを漏洩することだってあるのです。
ソーシャル・リスクがもたらす結末
数年前、ある有名ホテルのカフェでこんなことがありました。
カフェのパート従業員が、有名タレントが深夜ひそかにデートしているところを目撃したあまり興奮しすぎて、何の考えもなしに自分のブログか何かに書き込んだそうです。
そうしたら翌日あっという間に炎上して、問い合わせや苦情の電話が殺到して、ホテルは当分のあいだ、その対応に右往左往したそうです。
評判の良いホテルだけに、営業への影響は少なからずあったはずでしょうし、パート従業員は解雇になったようです。
また、何と答えていいか返答に窮するツイート事件もありました。
ある有名出版社の社員が、会社の仕事上のことでのクレームというかキレてツイートしたところ、翌日人事部からお叱りを受けたそうです。
普通の人間ならより慎重になるところですが、カレ氏は性懲りもなく「昨日、あれのことでまた人事に叱られちゃったよ」とツイートしてしまいました。
人事部にしてみれば、社員の人選を間違えてしまったかもと反省しきりだったかもしれません。
この二例は、不注意のために起きたのではなく、当事者の人としてのモラルや社会性を問われる問題ではないでしょうか。
さて、つぎの章では、どうすればこういったリスクをいち早く感知できるか、についてお話しします。
ソーシャル・リスクをマネジメントする3つの武器とは
監視して把握する!
リスクを危険度レベルによって正しく把握する!
前述しましたとおり、今の時代、リスクはどこにでも転がっています。
どんなに小さな会社でも、グローバルな大企業でも、切り傷くらいになら絶えずさらされています。
ここでの切り傷は、ほんのささいなキズです。
たとえば発売中の旅行用目覚まし時計に、説明書がついていなかった、というクレームが顧客から仮にA時計商会にあったとします。小規模ですが、世間ではよく知られた評判の良い会社です。
この場合、不手際について事前に顧客に謝罪したたうえで、丁寧な詫び状を添えて説明書を送付すれば一件落着するかと思います。
ところが、相次いで「説明書が入っていません」という事例が頻発したとしたら、どうでしょうか。
そのまま放置しておくわけにはいきません。原因を究明して、対策を講じなくてはなりません。説明書をボックスに同封する作業工程を見直し、そして一定の期間、再発しないかを監視する必要があります。
あくまでも仮定での話ですが、ある日を境に「目覚ましが鳴らない」というクレームが数件きたとしましょう。
こうなると事態は深刻化する可能性をはらんでいます。説明書添付忘れの次元の話ではありません。
目覚ましが鳴らなければ、目覚まし時計とは言えませんから。
これは商品にとっては致命的な欠陥ですが、その目覚まし時計が超人気商品でなかったことも幸いしました。すぐに設計自体を入念にチェックしたところ、ミスがあることがわかり、短期間で修正できないことが判明し、在庫の回収に踏み切りました。
さらに、幸いにもその後のクレーム件数が少なかったこと、不良版の在庫回収がスムーズだったこと、全額返金が大した混乱もなく滞りなくおこなえたことなどで、さらなる事態の悪化は免れました。
けれども、このことによって、業界内でA時計商会はかなりのイメージダウンを強いられましたが、世間には公表しませんでした。
会社はこの不良版の廃盤を決定し、のちにグレードアップしたバージョンを製品名を変えて発売しました。
この初期段階では、リスクの危険度レベルを正確に把握することが最重要なので、この点で会社の対応は適切といえます。
つぎでは肝心の予防策について解説します。
企業発信力を磨く!攻めの予防策
新しいニュース性のある情報をつぎつぎと発信してマイナス・イメージを払拭する
さて、件の目覚まし時計のA時計商会は、20年前の「目覚ましが鳴らない」事件の際に、他に取るべき対応策はなかったのでしょうか。
まず原因をいち早く感知したという点では対応は適切だったと言えますが、世間に公表しなかったのはコーポレートガバナンスの面では失格です。
もし許認可事業であれば欠陥を報告すべき機関速やかに報告し、消費者には欠陥の原因、全額返金方法などの事態収拾策についての公告を新聞などに掲載する必要がありました。
当時は公的な伝達の手段が新聞、テレビしかなかったからですが、ネックは費用面で相当にお金のかかることです。
ではいまは、他の伝達手段はあるでしょうか?
答えは、より安価で済むホームページを最大限に活用することです。
いまやホームページは企業にとって、強力な武器となる発信源のひとつです。
人は誰でも、長所よりも短所を忘れない側面がありますが、良いニュースでもやりようによっては拡散してくれます。
20年前の悪いイメージを払拭するためのひとつの方法が、このホームページです。
今の時代、信頼される企業への第一歩は、それがたとえ商品の欠陥を公表することになっても、絶えず正確な情報を発信しつづけることです。
情報は新商品についてでもいいでしょうし、決算報告、新入社員のインタビューでも、イベント案内でも、研修制度でも、ちょっとしたお役立ち情報でも、会社に関することならなんでもオーケーです。
ただし、あくまでも欠陥を取り繕うような発信は避けるべきです。より中立的場に立った、ニュースバリューのある情報だけを発信することに徹しましょう。
お客さんとの接点の機会をより多くつくり、より密にして風通しをよくすることが、信頼回復への近道ではないでしょうか。
以前に比べて何倍もの情報発信をしたにもかかわらず、会社名を検索したら、依然として悪い記事が残っていたとしましょう。
もはや打つ手はないのでしょうか。
つぎはテクニカル面での評判対策についてご紹介します。
評判の原状回復のための解決策
企業全体で情報を共有する大切さ
果たして、件のA時計商会は20年前の「目覚ましが鳴らない」騒動のニュースはネット上から完全に雲散霧消したのでしょうか。
「A時計商会 評判」で検索すると、1ページ目の最初のほうは企業の公式ホームページ、採用情報、新製品発表ニュース、イベント案内…等々あって、9番目にまだあったします。
このニュースは事実なので管理サイトに削除要請をしたところで削除することは不可能に近いのですが、あと2本ニュースがあいだに入れば、騒動ニュースは2ページに押し下げることができます。
そうなれば、会社の首脳部も担当者も20年間のストレスを発散できて、気分もすっきりすることでしょう。
その順位押し下げ方法には、それなりのノウハウとテクニックが必要になってきますので、私ども「風評被害対策ラボ」にご相談ください。
ソーシャルリスクマネジメント リスク回避のまとめ
企業はいつの時代も共存する社会に対して、それ相応の責任を負っています。
ソーシャル・リスクはつきものですが、そこは柔軟性をもってマネジメントすることが求められます。
それにはつぎの方法が有効です。
ソーシャル・リスクへの気づき、監視→対応→解決の一貫体制を構築することです。
具体的には――
①顧客サービス部(カスタマーサポート)にネット担当の設置
会社や業界の評判・口コミを監視し、定期的に総括して内容をリスクのレベルに分類してレポートを作成する。
②対策チームの結成
顧客サービス部から上がってくる定期レポートを分析して、重大性を精査、スピーディな解決策を考える。
③広報部の役割
対策チームのアドバイスのもと関係部署と連携・協議し、リスクレベルによっては弁護士や役員会にもはかり、解決策に関する会社としてのメディア対応を率先してリードする。
そして、さらに重要なのが社員全員への情報の共有です。
企業自体が経験した事例やあるいは他社の事例などについても、全社員を対象とした定期的な研修をおこなったり、外部の専門家を招いてセミナーを開催したりすると大変有効です。
大事なのは、何度も繰り返しおこなうことです。
そうすれば、リスク感知意識が自然と芽生えてきて、気がつくと、社員ひとりひとりが目利きのリスク監視員になってきます。
それが企業としては理想でしょうが、とはいえ、24時間ネット監視専用の担当者を雇用するわけにもいきません。
また、雇用するにも監視のノウハウを兼ね備えた人材はあまり多くはいません。
私たち「風評被害対策ラボ」は、あらゆるソーシャル・リスクに関して監視から解決策までをご提案するプロフェッショナルです。
お困りの際はぜひお問い合わせください。